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大事なことは、シンプルなんかじゃない。故にシンプルだ。~発達障害者からのシンプル・シモン鑑賞レビュー

アスペルガー症候群のシモンが大好きなお兄ちゃんのため、
「完璧な恋人」探しに夢中になるうちに、気付いたこと・・・

物理とSFが大好きなシモンは、気に入らないことがあると自分だけの“ロケット”にこもり、想像の宇宙へ飛び立ってしまう。そんなシモンを理解してくれるのは、お兄ちゃんのサムだけ。でも、シモンのせいでサムは恋人に振られてしまう。彼女がいなくなって、落ち込むサム。そのせいで自分のペースを乱されるシモン。サムに「完璧な恋人」さえいれば、生活が元通りになると考えたシモンは、サムにぴったりな相手を探し始める。そして、偶然出逢った天真爛漫なイェニファーに狙いを定め、ある計画を実行に移すが・・・。

映画「シンプル・シモン」公式サイト「ストーリー」より抜粋


……自分の生活が一番(どっかの政党みたいだ)なのかお兄ちゃんへの愛故なのか。まずそこに恐々としました。
 なぜなら前者ならわかりやすくカリカチュア(戯画化)された自閉症の特性に過ぎませんし、だとしたら自閉症がストーリーのために都合よく使われているわけです。そしてもし後者だったら、……って自閉者の愛情が健常者にまともに伝わるわけがないじゃないですか。そこが安っぽく描写されてるなら、自閉への描写もまた期待しない方がよさそうです。

 ネットで事前に見た評価は★4.5/5点満点。高得点…… だが待ってほしい。健常者の高得点よ? アスペルガーがわかりやすいとか兄弟愛がどうとか、うわーこれは両方覚悟したほうがよさそうだ。

 とりあえず「お手製のドラム缶宇宙船」を楽しみに(というか奮いに)上映会へ向かったわけですが。

 結論から言うと、どっちでもありませんでした。「それが当然だから、する」。
「出てったお兄ちゃんの彼女に、『君が変われば問題ない。僕はアスペルガーだから変われない』と主張したところ『あなたともやっていけるクソ女を探しなさいよ』と言われたからその通りにした」
 わお。わたし的にこの作品の一番のハイライトでした。なんという的確な自閉症描写!
 ちゃんとお兄ちゃんに「何やってるんだ?」的に聞かれて「クソ女を探す」って言ってたからね!
 当然、という言葉を使いましたが、この主人公、「正解」にやたらこだわります。答えはすぐに出ると思ってます。
 まあ、多くの部分は残念ながらカリカチュアされてますよ。しょうがない。一緒に見に行った発達障害の子が「発達障害者がみんなこんなだと思われたら困る」って言ってましたけど、まぁ私としては、“ラブコメを成立させるための道具”たらしめられてるのは仕方ないと思います。そこはラブコメドラマである以上、OLだってオタクだって同じ。だってほら、みんな言うでしょ?「綾瀬はるかみてーなこじらせ女子いねーよ」って話ですよ。

 なまじ周囲の人物描写が卓越してるため目についてしまったという側面もあるな。うん、周囲の人物がすばらしい。
 まずお兄ちゃん。冒頭からシモンを特別なやりかたで理解し愛しているところがガンガン伝わってきます。なのに聖人君子でもなんでもない、悪ふざけは大好きだし三大欲求(婉曲表現)もある生身の男感ぷんぷんです。
 この兄ちゃんが事態の推移、というか主にシモンの無配慮ムーブのせいでどんどん憔悴していくわけですが。

 というかちょっと脱線しますが、中盤でシモンが連絡なしに職場から失踪するわけなんですが、連絡を受けた兄ちゃん、仕事場からシモンがおん出てきた実家から例の元カノの家から駆けずり回ります。休憩中の警官に相談したり。
……仕事もしてる18歳の青年ですよ?(まぁその仕事から脱走してはいるんですが) ボロボロになるまで探し回る必要がある。ここにこの映画のギミックの重要なカギがあると思う。
 お兄ちゃんの元カノが吐き捨てるわけです、「いくら物理学の天才でも」。だけどヒロインが途中で思いっきり指摘するわけです、「こんな仕事つまらなくないの?」シモンの自閉症らしさはそれに対する答えのほうに集約されているように見えますが、物理学の天才でも、芝刈りが仕事なんです。福祉大国北欧でも。
 うがった見方だと承知はしていますが、同僚もあれは多分障害者、ただし発達障害……少なくとも自閉症じゃないとして描かれてるんだろうけど、唐突に奇声を発して殴りかかったり動物的な色気を出したりしてるわけです。つまり発達障害者の特性を活かして能力を伸ばす職場環境じゃないんです。
 まあ、その環境でシモンは冷静に周囲の三角関係を認識かつ嫌悪してるのがちょっとリアリティないかなって思ったとこですが。私の知ってる発達障害者に限ると前置きしておきますが、周囲の恋愛なんて関知してないか面白おかしくご注進して来る人か二極化されてる気がします。前者は自閉症、後者はAD/HDに多いかな(偏見)。

 そんな毎日で唐突に出会う(衝突に出会う)ヒロインもいいキャラしてます。最初はシモンの言うとおり明快なお兄ちゃんに対して、優柔不断でいっそ愚かなように見えますっていうかそう描写されてるんだろうな。
 彼女は言います。「そんなすぐには決められない。そういうものじゃないでしょ?」
 でもそれは彼女がにぶいからじゃない。
 好きか嫌いか。合うかどうか。
 私達は肌の感覚ですぐに判じてしまいがちです。そしてその判断の間違いにあとで傷つくこともたくさんあります。
……大事なことって、そんなに簡単に見えるものじゃないんじゃないかな?
 そして、お兄ちゃんには見えていなかった、いつの間にか見えなくなっていた大事な真実が一つあります。

 自分のペース、自分の世界に入ってからは、実に生き生きとして率直、そして決断的なヒロイン。時には泣いたりもしますが、その説明は“まるでお兄ちゃんのように”わかりやすいとシモンも言うほど。友達も彼女をよくわかってるし、ある種異様なシモンも屈託なしに輪に入れて盛り上がる最高の仲間です。
 それに対して、明快で常に配慮を見せていたお兄ちゃんが傷つき怒りにとらわれていくのが好対照。しかしヒロインはそこに投げかけます。
「シモンはあなたを愛している」。
 どうして、そう言えるのか。伝わらないはずの、自閉者の愛なのに。ヒロインはその時シモンの想いをどう受け取るのか。

 その一幕はその後シモンが陥るパニックの理由とか、評価の高いラストシーンなんかよりもよっぽどクライマックスです。
 あなたも是非、その目で確かめてください。

テーマ : 発達障害(自閉症、アスペルガー、LD、ADHD、発達遅滞) - ジャンル : 育児

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